医療関係者の方へ
ファブリー病 診断外来のご案内
ファブリー病・ライソゾーム病が疑われる患者さんがいらっしゃれば、ぜひご紹介ください。
患者さんの症状としては、下記のチェックリストをご参考にしてください。
ファブリー病の症状チェックリスト
- 幼少期から、手足の指先の痛みが続いたり、汗が出にくい。
- 特にお腹、お尻、陰部に赤紫色の発疹がある。繰り返す消化器症状(下痢・腹痛)がある。
- 難聴があり、心肥大や腎障害(タンパク質、腎機能障害など)を併発している。
- 50歳以前に原因不明の脳梗塞を発症し、親族も同様の症状がある方がいる。
- 原因不明の心肥大の指摘があり、手のひらや足の裏に過去・現在強い痛みのある方。
- 原因不明の腎障害(タンパク尿、透析)指摘がある。尿沈殿でマルベリー小体を認める。
- 60歳以前に、心疾患、腎疾患、脳血管障害が原因で、亡くなった家族がいる。
- 心肥大の指摘がされていて、タンパク尿が出てきた。親族も同様の症状がある方がいる。
ファブリー病の概要
ファブリー病は、イギリスの皮膚科医師アンダーソン(Anderson)とドイツの皮膚科医師ファブリー(Fabry)により別々に「びまん性体幹皮角血管腫」として1898年に初めて報告されました。この病気は、細胞内のリソゾーム(ライソゾーム)の酵素がなくなったり、酵素の働きが低くなることで、体のなかでさまざまな症状が引き起こされる「代謝異常症(たいしゃいじょうしょう)」の一つです。この病気の原因は、ある遺伝子の変異が原因です。
からだの中でリソゾームの酵素(α-ガラクトシダーゼ(あるふぁ‐がらくとしだーぜ))がなくなると、からだの細胞に必要のない糖脂質(とうししつ)(グロボトリアオシルセラミド(Gb‐3)、別名セラミドトリヘキソシド:CTH))が溜まるため、手足に激しい痛みを感じたり、皮膚や尿の異常、また下痢や脳梗塞、心臓の病気など、全身に症状が現れます。病気が悪くなると腎臓、心臓、脳などに臓器障害を来たし、突然死することもあります。
ファブリー病は今まで、X染色体劣性遺伝(エックスせんしょくたいれっせいいでん)と言われていたため、主に男性がファブリー病になると考えられていました。しかし、近年では女性でもファブリー病に特有の臨床症状がみられるため、X染色体性遺伝とされています(Kobayashi M et al. (2008) )。通常、古典型ファブリー病は、欧米では欧米で40,000(男性)~110,000人に1人の割合といわれていますが、最近でのマススクリーニングでは、もっと多くの患者さんがいるとの報告もあります。また、心臓のみに現れる心ファブリー病も、普通考えられるよりも多く存在していると言われております。後に説明示しますが、鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(Nakao S et al. (1995) )。遺伝子の異常があるため、遺伝子を持った本人から、子供に伝わる可能性があり、家系の中で代々受け継がれていくケースも多くみられます。
また、ファブリー病は国が難病(特定疾患)と指定している「ライソゾーム病」に分類されている病気です。ファブリー病は、適切な治療や生活環境を整えることで、病気の進行を遅らせ、日常生活における生活の質の改善を期待することができます。
最初は、心臓の筋肉が厚くなり、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)のように心肥大がみられるが、病期の進行とともに一部もしくは全体の左室壁運動低下が出現し、拡張型心筋心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)となり、心不全や不整脈をおこします。
疫学と分類
ファブリー病の分類は大きく分けて、3つに分類できます。更に、男性は古典型と、亜型(表1)に分類され、女性はヘテロ接合体とされております。
古典型に比べわずかに酵素活性を持つと言われています。
(男性患者の分類)
病型 | 古典型 | 亜型 | ||
---|---|---|---|---|
腎型亜型 | 心型亜型 | CNS亜型 | ||
発症年齢 | 幼少期(4~8歳) | >25歳 | >40歳 | >30歳 |
平均死亡年齢 | 40歳前後? | ? | >60歳 | 40歳 |
被角血管腫 | ++(80%前後) | ± | - | + |
四肢の知覚異常 | ++ | ± | - | + |
発汗減少症 | ++ | ± | - | + |
角膜混濁 | ++ | ± | - | + |
心障害 | 虚血/心筋梗塞 | 左室肥大 | 左室肥大 | + |
脳血管障害 | 一過性脳虚血発作脳卒中 | ? | - | 一過性脳虚血発作脳卒中 |
腎障害 | 腎不全 | 腎不全 | 軽度蛋白尿 | 軽度蛋白尿 |
α-GAL活性 | <1% | <5% | <10% | <10% |
(衞藤 義勝.日本内科学会雑誌.98巻4号.p.875-882(2009)より表を引用)
ファブリー病の症状
ファブリー病は、細胞内リソソーム(ライソゾーム)の加水分解酵素の一つである「α-ガラクトシダーゼ(α-GAL)」という酵素の遺伝的欠損や活性の低下により起こる病気です。
この酵素は「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、別名セラミドトリヘキソシド:CTH)」という糖脂質を分解する働きを持ちますが、活性が不十分だと分解されなかったGL-3が徐々に全身の細胞や組織、臓器に蓄積していきます。蓄積したGL-3がある一定量を超えると、疼痛を含む神経症状、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)、角膜混濁(かくまくこんだく)などのほか、心機能障害、腎機能障害など、さまざまな症状が出現します(表2)。
障害される臓器 | 症状 |
---|---|
脳 | 脳血管障害(のうけっかんしょうがい) |
皮膚 | 低汗症(ていかんしょう)、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ) |
神経 | 四肢疼痛(ししとうつう)、知覚障害(ちかくしょうがい) |
目 | 角膜混濁(かくまくこんだく)、白内障(はくないしょう) |
心臓 | 心肥大(しんひだい)、不整脈(ふせいみゃく) |
腎臓 | タンパク尿(たんぱくにょう)、腎不全(じんふぜん) |
消化器 | 腹痛(ふくつう)、下痢(げり)、便秘(べんぴ)、嘔吐(おうと) |