ファブリー病の診断と治療方針
ファブリー病の診断
(図1)ファブリー病を疑う症例から確定診断までのプロトコール
ファブリー病に特徴的な各臓器の症状で発見されることが多いです。
血液検査でα-ガラクトシダーゼA活性(項目ではα-GALと記されることが多いです)を測定し、基準値を下回っているか測定できない場合は、男性に関しては確定診断となります。
障害が予想される臓器の病理検査(臓器のごく一部を採取して、異常があるか顕微鏡で確認することを言い、生検ともいいます)も参考となります。
女性の患者さんでは、酵素活性のみでは診断できない場合がありますので、血液や皮膚の細胞を使って、遺伝子診断を行うこともあります。
「ファブリー病の症状」であげられているような、ファブリー病に特徴的な症状があるかどうかを調べます。
酵素診断
血液中の血漿(けっしょう)、白血球、あるいは尿中のα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)活性の測定を行います。酵素活性の欠損または低下が認められれば確定診断となります。
病理診断
皮膚や腎臓、心臓などの組織のごく一部を採取して、異常があるかどうかを顕微鏡で調べます。
生化学的診断
主に血液や尿を採取し、そのなかの糖脂質GL-3が蓄積しているかを調べます。臓器の組織中のGL-3の量を調べることもあります。
遺伝子診断
血液や皮膚の細胞を使って、遺伝子を検査します。女性のファブリー病では、酵素活性のみでは診断できない場合があり、このようなときに遺伝子診断が行われることがあります。
ファブリー病の治療方針
小児期の診断は難しく、多くの患者さんは成人期に心臓や腎臓の異常をきっかけに診断されています。
ファブリー病の治療法として点滴による酵素補充療法と投薬によるシャペロン療法があります。
これらの治療により腎機能や心機能の改善などが認められますが、発病後の完全な治癒はとても難しいです。重度の心機能低下や腎不全に至った場合は、心臓ペースメーカーやバイパス手術、血液透析や腎移植などが必要になります。酵素補充療法やシャペロン療法は病状が進行している場合は、十分な治療効果が期待できないため、可能な限り早期に開始することが重要と考えられます。
対症療法としては、手足の疼痛にカルバマゼピンが有効で、腎障害にはACE阻害薬やARB、腎不全には血液透析、心病変や脳血管病変に対しては抗不整脈薬、抗血小板療法などを用います。
またファブリー病は遺伝病です。患者さんのほとんどは男性ですが、女性でも発症することがあります。お子さんがこの病気と診断された場合、ご両親がファブリー病の保因者の可能性があります。その場合、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を受けることができます。
ファブリー病の治療には、酵素補充療法と症状を緩和させる対処療法があります。
- 日本では現在、2つの遺伝子組換え製剤がファブリー病の酵素補充療法治療薬として認められています。
- くすりは、2週間ごとに外来に受診し、点滴で補充します。1回の投与につき約40分~3時間程度かかります。
- 当院では、3号館南棟 免疫包括医療センターにて、”快適に” 酵素補充療法を行うことが出来るようになりました。