ファブリー病と遺伝
からだの中でリソゾームの酵素(α-ガラクトシダーゼ)がなくなると、からだの細胞に必要のない糖脂質(グロボトリアオシルセラミド(Gb‐3)、別名セラミドトリヘキソシド:CTH))が溜まるため、手足に激しい痛みを感じたり、皮膚や尿の異常、また下痢や脳梗塞、心臓の病気など、全身に症状が現れます。病気が悪くなると腎臓、心臓、脳などに臓器障害を来たし、突然死することもあります。
ファブリー病は今まで、X染色体劣性遺伝と言われていたため、主に男性がファブリー病になると考えられていました。しかし、近年では女性でもファブリー病に特有の臨床症状がみられるため、X染色体性遺伝とされています(Kobayashi M et al. (2008) )。通常、古典型ファブリー病は、欧米では欧米で40,000(男性)~110,000人に1人の割合といわれていますが、最近でのマススクリーニングでは、もっと多くの患者さんがいるとの報告もあります。また、心臓のみに現れる心ファブリー病も、普通考えられるよりも多く存在していると言われております。後に説明示しますが、鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(Nakao S et al. (1995) )。遺伝子の異常があるため、遺伝子を持った本人から、子供に伝わる可能性があり、家系の中で代々受け継がれていくケースも多くみられます。
(引用元:http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000647.html)
ファブリー病の遺伝子異常
ファブリー病の母親からは男児、女児にそれぞれ2分の1の割合で遺伝し、父親からは女児には遺伝しますが、男児には遺伝しません。
この遺伝の形式は、古典的ファブリー病でも、亜型/遅発型ファブリー病でも同じです。しかし、同じように遺伝していても、患者さんにより症状が強い人と、軽い人がいますので、遺伝子の異常だけで全ての症状や程度を説明できるわけではありません。

(引用元:http://www.fabrynet.jp/fabry/fabry03.html)
遺伝子の変化と症状の現れ方
ファブリー病は、α‐ガラクトシダーゼ(α-GAL)という酵素をつくる遺伝子の変化が原因で起こります。この遺伝子は性別を決めるX染色体上にあり、「X連鎖性劣性遺伝<えっくすれんさせいれっせいいでん>」と呼ばれる形式で伝わります。
※ファブリー病は、遺伝子変異を有している女性(ヘテロ接合体<せつごうたい>)に関しても、一定以上の割合で症状が出ることが分かっているため、「X連鎖性遺伝」とも呼ばれています。
染色体は、遺伝子の乗り物といわれ、染色体上にはたくさんの遺伝子が乗っています。ヒトの細胞には、2本ずつの対になった23対(46本)の染色体があり(図3)、このうちの22対の染色体は男女ともに同じで、「常染色体」と呼ばれます。残りの1対は男女で異なっており、「性染色体」と呼ばれます。男性にはX染色体とY染色体が1本ずつ、女性にはX染色体が2本あります。

これに対して、女性(XX)はX染色体を2本もっていますので、「X連鎖性劣性遺伝」の病気では、一般的に片方のX染色体にある遺伝子に変化があっても、もう一方のX染色体の遺伝子が必要な役割を果たすため、症状は現れにくいと考えられています。
しかし、最近の報告によると、ファブリー病では、片方のX染色体のα-GAL遺伝子のみに変化がある場合であっても症状が現れる人もいることが分かってきました2)。その理由としては、次のように考えられています。