ファブリー病とは

ファブリー病は、細胞内での糖脂質の分解に必要な酵素が先天的に不足しているために、全身の細胞に糖脂質が蓄積する先天代謝異常症です。(図1参照)

(図1)ファブリー病のしくみ

ファブリー病のしくみ

20代までに鋭い手足の痛み、汗をかけない、臀部や陰部の赤紫色の発疹、頻繁な腹痛や下痢といった症状があります。特に手足の疼痛は、ストレスや高温、疲労で引き起こされ、痛みにより運動ができなかったり、それらが原因で不登校になったりすることもあります。

これらの症状を放置しておくと青年期や中年期になって腎症状(蛋白尿、腎不全)、心症状(心臓の肥大、不整脈)、脳の症状(脳梗塞、脳出血)が出現し、年齢とともに症状が重症化していきます。この他、難聴、下痢などの消化器症状、精神症状を認めることもあります。

学童期までの典型的な症状を呈さずに、成人期になり、心障害のみを認める心亜型や腎障害のみの腎亜型の遅発型などがあります。

障害を受ける臓器・細胞と症状

障害を受ける臓器・細胞 症状
腎臓 腎機能障害(蛋白尿)
心臓 心肥大、不整脈、狭心症、弁膜症、高血圧症
神経 四肢疼痛、聴覚低下、脳血管障害、うつ症状
角膜混濁
皮膚 被角血管腫(右図)、低・無汗症
消化器 胃腸障害
日常生活の注意点

  • ファブリー病の疼痛発作は、体力の消耗、精神的なストレス、疲労、環境の急激な変化によって引き起こされることが多いといわれていますので、日頃からなるべく避けるようにしましょう。
  • ファブリー病は腎臓に障害をもたらす可能性がある疾患ですので、食事(具体的には塩分やたんぱく質の取りすぎ)に注意しましょう。
  • 喫煙は心臓や肺の機能を低下させるだけでなく、ファブリー病を重症化する可能性があります。喫煙者は禁煙を心がけましょう。

ファブリー病

関連リンク

ファブリー病の症状

ファブリー病の症状は、小児期から現れやすいものと、成人してから現れやすいものがあります。
すべての症状が現れるとは限りません。

神経

頭が痛い、めまい、
手足の力が入らない


目がまぶしく感じる
皮膚

お腹、お尻、陰部にかゆみのない、赤紫色の小さなふくらみがある
自律神経

手足の先が痛い、
汗をかきにくい


めまい、
耳が聞こえにくい
心臓

動悸、息苦しい、
健康診断で心臓が
大きいと言われた
腎臓

タンパク尿、透析、
健康診断で腎臓が
悪いと言われた
脳血管

脳の血管が詰まって
いると言われた
消化器

おなかが痛い、
下痢が続く
呼吸器

息苦しい、
せきが続く
その他

何となくだるい、
気分がすぐれない
現れる症状の種類や時期には個人差があります。

ファブリー病と遺伝

ファブリー病は今まで、X染色体劣性遺伝と呼ばれていたため、主に男性の疾患と考えられていました。しかし、近年では女性でもファブリー病に特有の臨床症状がみられるため、X染色体性遺伝(図2参照)とされています(Kobayashi M et al. (2008))。

通常、古典型ファブリー病は、欧米では40,000(男性)~110,000人に1人の割合といわれていますが、最近での新生児マススクリーニングでは、約7,000人に1人の割合でファブリー病の患者さんが認められたという報告もあります(Inoue T et al. (2013))。また、心臓のみに現れる心ファブリー病も、一般に考えられるよりも多く存在しているといわれております。
後に説明示しますが、鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(Nakao S et al. (1995))。遺伝子の異常があるため、遺伝子を持った本人から、子どもに伝わる可能性があり、家系の中で代々受け継がれていくケースも多くみられます。

(図2)ファブリー病と遺伝

ファブリー病と遺伝

 
 
ファブリー病と遺伝